耐震計算偽造

mituru2006-01-18

耐震計算偽造:衆院委証人喚問 小嶋・ヒューザー社長、政官界へ配慮チラリ
 ◇強気一転、小声で答弁

 刑事訴追の恐れがあるので、証言を拒絶したい−−。姉歯秀次・元1級建築士らの証人喚問後、「私も喚問してほしい」との発言を繰り返していた小嶋進社長は17日の証人喚問で一転、強気の態度を翻した。補佐人として同席した弁護士の意見を求めながら慎重な答弁を繰り返した小嶋社長。自身に迫る警視庁などの捜査や、関係が指摘される政官界への配慮が見え隠れした。【篠原成行、種市房子】

 紺色スーツ姿で議場に現れた小嶋社長は、淡々とした表情で、11月の参考人招致のように声を荒らげる場面はなかった。冒頭、林幹雄国土交通委員長(自民)から「違法性の認識はあったのか」と問われた際にも、「ありませんでした」と明言するなど、喚問は淡々と進むかに思われた。

 しかし、公明党佐藤茂樹議員が質問に立つと態度を一変。「偽造が発覚した際、『公表するな』と圧力をかけたか」「耐震構造に問題があると知りながらマンションを引き渡したのか」などの質問に対しては、そのたびに後方の席に座った補佐人に意見を求めた上で、「証言を控えさせていただく」と繰り返した。

 証言拒否が続く中で質問に立った民主党馬淵澄夫議員が、小嶋社長が11月20日に「グランドステージ川崎大師」(川崎市)の住民に対して行った説明会の録音テープについて取り上げた。「この中で安倍晋三官房長官の名前を出して『50億円の公的貸し付けをお願いしている』と話しているが事実か」と問うと、小声で「秘書の方に相談したことはある」と答えた。

 一方、安倍官房長官を含め、名前が挙がった議員については「一時も早く住民の皆様に対応したいと考え、相談できる所に相談したということ」と述べたものの、口利き依頼の事実は否定。喚問後の会見では「国民の皆さんにとって納得できないことも多かったかなと思うが、ぎりぎり許される範囲内だ。偽証はなかったと思う」と述べた。

 ◇「あんな態度で…」−−傍聴住民、怒り心頭

 「あんな態度で、住民の理解が得られるものか」。衆院で17日行われたヒューザー(東京都千代田区)の小嶋進社長に対する証人喚問は、ヒ社が販売した「グランドステージ」シリーズのマンション住民が傍聴した。「証言拒否」を繰り返す小嶋社長に、怒りの声が上がった。

 「グランドステージ茅場町」(東京都中央区)の管理組合理事長(47)は「態度や説明を聞いて、補償する意思が全くないことが分かった」と憤る。また、証人喚問で複数の政治家の名前が出たことには、「政治家と結びつき、事実をゆがめようとしていたとすれば、まさに癒着だ」と語った。

 「溝の口」(川崎市)の男性(33)も「怒りを通り越し、開いた口がふさがらない」とため息。「東向島」(墨田区)の住民でつくる対策委員会の田中拓代表(32)は「答えられた質問もあったはず」と話し、「議員側も政治のかけひきのような質問より、偽造事実に関してもっと追及してほしかった」と述べた。【桐野耕一】

毎日新聞 2006年1月18日 東京朝刊